【古雅楽館】リージ・エ・ビージ

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早春になると市場(しじょう)にいつ出るかと心待ちにしている野菜がある。「蕗の薹(ふきのとう)」や「葉山葵(はわさび)」はその中でも代表的だが、他に重要なモノとして「グリーンピース」もそのひとつだ。「グリーンピース」なら缶詰もあるし冷凍でも簡単に手に入ると仰る方もおられよう。然し生の美味しさ、風味は全く異なる。これだけは食べてみないと分からない。

「グリーンピース」はアカデミックに言うと「えんどう豆」の実が十分膨らんでいながらもまだ未熟で莢(さや)が青いものを収穫し、そのなかの実を食用とする実エンドウの一種である。実もまだ小さく若い莢ごと食べられるのは御存知「サヤエンドウ」だ。実エンドウの全国収穫量を見ると和歌山県がダントツで約2,700t二位鹿児島県の倍、サヤエンドウの収穫量は逆転して鹿児島が一位4,500t、和歌山は3,650t。両県合わせるとサヤエンドウで全国の3割、実エンドウだと何と8割を占める。これから読み取れるのはサヤエンドウはハウス栽培で通年栽培されるので産地は全国的に分散しているのに対し、実エンドウは露地栽培なので両県に集中しているということだ。露地物は夏の暑さに弱いので収穫時期が限られており、春先の今時分から鹿児島県産が出回り始め、やがて和歌山県産がとって代わる。

仙台では産地が遠いからなのか、生の需要が一般消費者にとって多くないからなのか、フレッシュ・グリーンピースは市内のスーパーであまり見かけない。が、先だって今年初物の「グリーンピース」がようやく行きつけの八百屋の店頭に並んだ。それもかなりの廉価で・・・。勿論見逃す筈がありません、早速一袋買って(本当はもっと買いたかったがまだチャンスがあるので)料理と相成った。

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【写真上左】莢付のグリーンピース、3人分で丁度適量。【写真上右】ポリ袋に貼ってあった産地表示。間違いなく鹿児島県産であります。

フレッシュ・グリーンピースの代表的な料理と言えば、グリーンピースのリゾット『リージ・エ・ビージ』であろう。春を代表する旬のメニューとしてイタリア人が自慢するだけあって万人が認める美味しい一品だ。元々は『ヴェネト州』の地方料理であったが、今やイタリア料理の定番と言えるほど有名になった。『リージ』はイタリア語で『米』、『ビージ』はヴェネト州方言で『(えんどう)豆』を意味し、文字通り米とグリーンピース主体の伝統的なスープである。スープと言っても具がどっさりなので、イタリア料理用語としてなじみ深い『リゾット』の方が通りがいいし、最近の料理本には双方の表現が入り混じっている。作り方はそんなに難しくないがポイントは何と言っても旬の生、しかも莢付でなければならない。莢から外した豆だけの物は風味が格段に落ちるし、この料理では莢も重要な役割を持つ。

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写真上左】レシピ本は伝統イタリア料理を現代風に合わせて再現したもの。材料表示の右側、オリーブ油の下にある『チポロット』と記してあるのが「葉玉葱」のこと。【写真上右】出来上がりの実例。職人技よりも如何に基本に忠実に作るかがコツ。【写真下左】莢を外して実を分けておく。【写真下右】煮込んでいる最中、常に監視を怠らずほったらかしにしない。かといってかき混ぜ過ぎるのも豆がコワレルので禁物。上の小鍋が莢入りのブロード。

《レシピ》 ①フレッシュ・グリーンピースを莢から外し、沸騰したブロードに莢を入れて(これが莢を必要とする理由)香りを移す。②同時進行形でバター、オリーブオイルで玉葱をソフリットしてパンチェッタと共に炒める。③豆を加えてさっと炒め、更に米を加えて炒める。米はリゾットと同じく水洗いしてはならない。④ブロードを足しながら18分煮る。ブロードは常に沸騰寸前位火を通したまま。⑤仕上げに小さく切った生ハムを混ぜ、皿に盛りつけた後、パルミジャーノ10をたっぷり振り掛けて食す。

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【写真上左】ほぼ出来上がりの状態、教科書通りの仕上がり。【写真上右】取り分けのテーブルに出したところ。電球の加減で赤っぽく写ってしまったがハロゲン光特有の「キラキラ感」が見た目に華やか。

何のてらいもない「皿」ではあるが、「春が来たな」としみじみ実感する一品(ひとしな)である。機会があったら是非お試しあれ。もっと簡単にと言う向きには『グリーンピースご飯』がいい。グリーンピースと米を一緒に炊き上げるだけ、豆が新鮮なら塩味だけでもいけるし昆布で補うのも良い。豆を茹でた汁でご飯を炊き、後で豆を混ぜると色がきれいなのでその様な作り方もあるけれど、私見では一緒に炊いた方が美味しさが引き立つように思う。まあ好みの問題ではあるけれど・・・。

いずれにしても米と豆との相性は抜群、栄養価の点でも極めて優秀なのだが、フレッシュ・グリーンピースが出終わるとウチではその年のグリーンピース料理も終しまい。グリーンピース(ミックスベジタブル含む)の缶詰や冷凍物は殆ど使わない11から、春以外の季節でこのメニューはあり得ない。今年はあと何回ありつけるだろうか。

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1.スナップエンドウもサヤエンドウの仲間。本来はグリーンピースの一種でアメリカ産の改良品種、1970年代日本に導入され豆が大きくなっても莢が硬くならず莢ごと食べられるのが人気を呼び、瞬く間に普及(ふきゅう)した。

2.「仙台朝市」の八百屋を巡れば出会う確率は高い。

3.Risi e Bisi 

4.イタリア北東部の州で、旅行好きでなくても知らぬ人はいないヴェネツィアが州都。州内には世界遺産が五か所あり、その他にも自然景観の素晴らしさ、由緒ある歴史建造物、バラエティ溢れる食の魅力で世界中の観光客を集めている。『ロメオとジュリエット』の舞台ヴェローナもこの州にある。

5.イタリアの中で家庭内で話される地方言語のみ、または地方言語を主に用いる住民の割合が最も多い州である(イタリア全国平均が16%なのに対しヴェネト州では39%!)。

6.『出し汁』のこと。鶏の出し汁が一般的だが、牛や豚、野菜や魚介からもつくる。我家では料理の合間に材料の残りかすから煮出して保存しておく。本格的に作ろうとすると手間がかかるし、材料費だけでもバカにならない。この場合チキンコンソメでも代用可。

7.伝統を重んじるなら普通の丸玉葱でなく葉玉葱を使用せよと『リチェッタ(レシピ<本>)』にある。

8.玉葱を主体にバターと(または)オリーブオイルでじっくり飴色(あめいろ)になるまで炒めること。この工程だけで1時間近くかかるのだが『リチェッタ』では玉葱がシンナリする程度で可とある。これも雨の日曜日の午後等、時間のある時に作り置きをして冷凍保存している。

9.塩漬けした豚ばら肉を乾燥させたもので俗に『生ベーコン』とも。大雑把だがこれを燻(いぶ)したのが『ベーコン』だ。根気があれば家庭でも作れるので『クックパッド』を参照されたし、多くの方が手作りしているのに驚くだろう。かく言うワタクシも手作り派だが今回は使い切ってしまったのでベーコンで代用。

10.正確には『パルミジャーノ・レッジャーノ Parmigiano reggiano』。イタリア料理の必需品とされるほど重要なチーズ。乳脂肪を分離させた前日の牛乳と当日の朝搾(しぼ)った牛乳を原料に3~4年(長いもので5年以上)熟成させたハードチーズ。旨み成分が凝縮しているのでこれを使うだけで料理が格段にグレードアップする。日本で『パルメザンチーズ(パルミジャーノの英語読み)』で売られている粉チーズは似て非なるモノで、EU圏内では規格から外れているため名乗ることができない。が然し、安価で風味もそれなりなのでこの際、代わりに使っても構わない(量は多目に)。

11.理由は簡単、缶詰類は着色料や色止めの添加物を使っているから。食品加工で色止めの薬物を使用した後は基準値を下回るまで豆を水洗いするのだが、そうすると豆の風味やビタミン等も失われてしまう。それを補う意味で食塩や調味料などを加えているが、逆に豆類に多いカリウムのナトリウム排泄作用を弱めることになるので、栄養学的には「?」と言わざるを得ない。

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【トップ写真】フクラスズメ、『膨ら雀・福良雀』とも。「冬」の季語で羽の間に空気を溜める姿がまん丸く見える雀の防寒対策。リビングの出窓から至近距離で撮影しても手が届かないとナメめているのか動じる気配がない。

 

 

 

 

 

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