【古雅楽館】ヤングコーン

 

 

スーパーなどの野菜売り場で、玉葱・ジャガイモ・人参などの基本野菜は常に需要があるから、最も目につく場所に置かれているのは当然として、ハーブや『真竹』等の「地域野菜」、以前紹介した『コリンキー』・『コールラビ』と言った「新顔野菜」は、店により品揃えや置いている量はまちまちだし、コストパフォーマンスを考えて全く売っていない店もある。

 

とりわけ一年に良くて十日から二週間、普通は一週間ほど、ほんの一時だけ店頭に並ぶ「季節物」は仕入れルートの関係もあり、大手スーパーでもなかなか手に入らない。具体的には「山菜」の「地味系」、間引きされた不揃いな「葉物」や「実物」である。例えば「山菜」だと『ナルコユリ』や『アケビの芽』、「間引き物」だと『南瓜(かぼちゃ)の新芽』、『メロン子』、そして『ヤングコーン』。皆さん、このうち一つでも実物を見たことありますか? 

 

その中で『ヤングコーン』。別名『ベビーコーン』とも言い、普通は水煮の缶詰やポリパック入りで流通しているが、これらは主にタイやベトナムからの輸入品で国内産は今の時期、生の状態でほんの少し出回るだけである。元々は商品作物としての「スイートコーン」で、栽培期間中で未成熟な『幼果』がなり始めた時に甘味を集中・凝縮させるため一本の茎に一つだけ残し、他は「間引き」したものが『ヤングコーン』の正体である。

 

タイ・ベトナムの栽培は日本と異なり、『ヤングコーン』だけを収穫するのが目的なので、広大な農地に植えたコーンは『幼果』の生育を見計らって全て収穫してしまう。「イネ科」である「トウモロコシ」はトマトやピーマンなどの「ナス科」と違い、『連作障害』が殆ど無いので一年を通して繰り返し栽培されている。

 

 

 

【写真上左】買って来たばかりのヤングコーン一袋。これで100円(!)。【写真上右】包装をはがす。穂先と根本はカット済。

 

一方、国産の『(生)ヤングコーン』の販売が限られているのは主な理由が二つあり、先ず鮮度の落ちるのが極めて早いというのがひとつ。収穫されても『穂』自体は「生きている」ため、「幼果」の糖分は時間と共に澱粉(でんぷん)に変化していく。常温だと収穫後数時間で糖分の減少が始まり、一日で甘味は半減するという。従って店に並んでいる物を見つけたら、その日朝採りしたものか必ず確認する必要がある9。また店で買った後は寄り道しないで家に直行し、すぐ調理に取り掛かるのがMUST。

 

もう一つ、普及を妨げていたのは農薬の問題である。「スイートコーン」は未熟な「幼果」を芯まで食べる『ヤングコーン』だと「野菜類」、コーンが肥大し始めると「雑穀類」として農薬使用基準が定められており、適合する農薬が異なるのである。「スイートコーン」を消毒する農薬は生育初期から使われると、間引きした「幼果」は規定上、最早商品として販売できない。『ヤングコーン』が取れるまで「野菜類」用の農薬をまけばいいのは「シロウト考え」で、使用農薬の種類を増やすと原価コストがバカにならないし、そもそも雑穀用と野菜用では特定の病害虫に対する「効き」が異なる。それと、農薬使用基準で収穫までの使用回数と収穫日までの最終散布日が定めてあるので、一本の茎から『ヤングコーン』と「スイートコーン」を収穫するのは手間のかかる状況だった。

 

 

 

 

 

【写真上左】皮は洗わず、コーンのサイズを選んで焼くだけ。古雅楽館では安定性と熱の伝導性の良さからスキレットを愛用。【写真上右】しょっちゅう転がす訳でもないから、その間包み焼きの要領でアルミホイルを被(かぶ)せる。【写真下左】焼き上がりはこんな感じ。表皮全体に焦げ目がつけば、芯まで火が通っている。【写真下右】試しに皮を剥(む)いてみる。コーン本体は焦げていないものの、アツアツの状態だ。

 

最近になって漸く「野菜類」・「雑穀類」双方に使用可能な農薬が認可され、効率の良い病害虫防除が可能になったが、鮮度の問題は依然として残っている。従って、『ヤングコーン』を求めるなら地元産が前提だけど、手に入らない方はネット通販で購入するしかない。この場合、信頼のある生産者を選び、配送手段も「チルド」で送ってもらえるのか、よく確認する必要がある。ということで、やっぱり『地産地消(ちさんちしょう)10』が一番という事になる。大都会にお住いの皆さんには申し訳ありませんが、仙台のような地方都市住まいには、このような隠れた恩恵にも与(あずか)るのです。

 

 

 

【写真上左】食卓へはシンプル且つワイルドに大皿に盛りつけた方が「ソレ」らしい。【写真下右】食する時は通常のコーンと同じく「塩」を添えるが、個性の強い「塩」がヨロシイので『カマルグ産 フルール・ド・セル』にする。

 

で、肝心の食べ方だが、普通のコーンみたいに茹でることはしない。レンジでチンするか、フライパン(またはオーブン)で焼くのが、甘味を引き出すのに適した手法である。特にグリルは経験上最適の調理手段で、『果穂』の大きさに合わせ時間をおいて転がしながら焼いてゆく。焼きあがった『ヤングコーン』は「果芯」はもちろんのこと、普通サイズのコーンだといがらっぽい「ヒゲ」や内側の「果皮」もほのかな甘みがあって、とても美味しい。

 

 

【写真】酒との相性。家呑みでビールはやらないので、いつもの「ジンのソーダ割」。今日のジンはちょっと気取って『ボンベイサファイア』だ。が、なんかイマイチ馴染まない感じ。

 

通常は手軽に「おやつ」として食べるが、ビールなど洋酒にも目先の変わった「アテ11」として相性が良い。適当にスライスしてサラダに混ぜたり、炒め物にも向く。他にもエスニック料理の食材として、古雅楽館が良く作るインド料理のひとつ、『サブジ12』にする手もある。今年はシーズンを過ぎつつあるが、↑にも書いたように生産の手間が楽になり、今後全国各地の店頭に並ぶ機会が増えると思うので、来年是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

【写真下】酒との相性。次はバーボンの『アーリータイムズ・ブラウンラベル』を持ち出して飲む。やっぱりと言うか、こちらとの相性は抜群。何しろ原材料のコーン比率は72%とのことだから、合わない方がおかしいと言える。それにしても「ジンの炭酸割」の後にバーボンのシングルショットとは、我ながら酔っぱらいもいいとこだ。

 

 

_________________________________________

 

1.「まだけ」 【古雅楽館】《タイ料理Ⅱ》参照。

 

2.【古雅楽館】《コリンキー》参照。

 

3.【古雅楽館】《コールラビ》参照。

 

4.「鳴子百合」 ユリ科アマドコロ属の多年草。草地や明るい樹林に見られ、丈は50~80cm位で5月頃、各節から小さな白花を下向きに咲かせる。丈夫な山野草として、自然風の庭に良くマッチする。仙台では4月半ば頃、山菜としてほんの一時だけ出回る。古雅楽館は専ら、「胡麻和え」や「ぬた」として食す。くせがなく、ほんのりとした甘みが春の訪れを感じさせてくれる。

 

【写真下】今年4月、行きつけの地元スーパーで買った『ナルコユリ』。この後「「酢味噌和え」にして食べたが、写真を撮り忘れてしまった。

 

 

5.【古雅楽館】《アケビ》参照。

 

6.高級果物「温室メロン」、受粉後に育ち始めた「実」は品質管理上、(『ヤングコーン』と同じく)一個を残して間引いてしまう。間引いた小さなメロンが『メロン子』で、産地では漬物などに利用されてきたが、最近は季節商品としてネットでも販売されるようになった。仙台には主に山形(鶴岡などの庄内)から6月頃入荷する。料理方法はやはり漬物が主で、他に炒めたり煮物などに利用。古雅楽館はズッキーニに準じて、イタリアンかスパニッシュの「おかず」にすることが多い。ただ『ヤングコーン』に較べると同じ個数(重さ)でも値段は3~4倍するから、若干高級食材のようなイメージがする。やはり「腐ってもメロン」か。

 

7.タイの『ヤングコーン』は稲作と同じく中央平原が主産地で、生産の半分以上は国内消費だが、選別された品質の高いものは缶詰加工され、海外に輸出される。タイの『ヤングコーン』はパイナップルに次ぐ輸出額(2006年:214,500万バーツ≒75億750万円)なので、同国にとっては重要な農産物である。なお、日本は世界で三番目の輸出先国である( 2億1,762万バーツ≒7億6,167万円)。

 

8.「連作」とは「同じ土地で同じ(科の)野菜や花卉(かき)を作り続けること」を言う。「連絡障害」は連作により植物が生育不良や病害虫にかかりやすくなることを指す。主に土壌の栄養素や微生物のバランスが崩れて起きるため、作物や花は一年ごとに植える場所を変えることが最良の予防方法である(「輪作(りんさく)」という)。連作障害が大きなものとしては「ナス科」が有名で、野菜ではナス・トマト・ピーマン・シシトウ・ジャガイモなど、花ではペチュニア・サフィニア・カリブラコアなどで、同じ個所に植えるには少なくとも4年のインターバルが必要である。夏に豪華な花を咲かせる『グラジオラス』も殊の外「連作」を嫌うので、毎年の植え付けには注意が必要だ。「イネ科」でも連作障害は確認されているが、「お米」を作る稲作で「連作障害」が起きないのは水を張っているから。「田んぼ」に川や用水路から水を入れることで、多くの新しい養分が補給され、一方で有害物質が洗い流される。また田土のpHの改善にも貢献する(pHについては【古雅楽館】《ミントジュレップ》参照)。品質の高い「お米」の産地には必ず清らかな「銘水」が流れているのがその証(あかし)だ。

 

9.『スイートコーン』もそうだが、新鮮さを判断するには「切り口」を見ることが簡単で確実。「白っぽい」ものが新しい証拠、古くなるにつれ「茶色」に変色する。

 

10.「地元で生産されたもの(主に農産物や水産物)を地元で消費する」こと。旬の生鮮食品を新鮮な内に食べられる、新鮮なるが故に栄養価が高い、地域伝統的食文化の維持や継承、活性化につながる、などのメリットがある。

 

11.古雅楽館がよく使うコトバだが、本来関西弁だとは最近まで知らなんだ。「つまみ」や「肴(さかな)」と同じ。因みに「肴」は室町時代「酒のおかず=酒菜」を語源としているので、正確には「酒の肴」とは言わない。「頭痛が痛い」みたいなもの。

 

12.インド料理で野菜にスパイスをまぶした「炒め煮」や「蒸し煮」のこと。ジャガイモ・オクラ・カリフラワー・苦瓜・ズッキーニなどが(現地では単品で)よく食べられる。使用するスパイスは、ターメリック・クミン・コリアンダー・カイエンペッパーなど(概要については【古雅楽館】《ミントジュレップ》参照)。

 

写真】古雅楽館の『サブジ』は夏の「おかず」定番メニューで、野菜好きだから家にあるものを皆使い、シュウイチは弁当にも持参。色とりどりの「夏野菜」を炒めるだけの超簡単料理だ。【左】はタマネギ、緑・赤のパプリカ、コリンキー、ズッキーニ、ヒラタケ。【右】はタマネギ、緑・赤のパプリカ、コリンキー、ブロッコリー、胡瓜、茹でて冷凍していた真竹。

 

 

 

______________________________________

 

【トップ写真】梅雨に入る直前の古雅楽館、玄関前。手前のピンクは『スターフロックス』、真ん中の青い二つが『ロベリア』、右奥赤いのは『ニコチアナ』。現在は長雨にたたられて、いずれも悲惨な状況になっている。

 

トラックバック・ピンバックはありません

トラックバック / ピンバックは現在受け付けていません。

コメントをどうぞ