【古雅楽館】新しい花のなまえ Ⅰ

 

古雅楽館の庭がジャングルと化しつつあるのは【古雅楽館】《庭の訪問者》をはじめとして、これまでも書いてきた。その影響で草花は殆ど地植えが不可能になってしまい、繁茂するのは皆雑草ばかり。大きく育って株分けした宿根草を地植えしても、一年もしない内に消えてしまう。試しに庭のあちこちを掘ってみると、どこも木の根っこがはい回っていて、樹勢が強いから何を植えても新参者は負けてしまうのだ。そんな訳で庭に草花を植えるのは五年ほど前のクレマチスを最後に止めてしまった

 

現在、草花の栽培は色々な種類・サイズの「プランター」と「鉢」で行っている。「鉢」も育苗専用の中型『ビニールポット』を多用、昔からある『素焼鉢(すやきばち』は重く割れやすいので、過湿や暑さをことさら嫌う「山草」と「ハーブ」専用だ。プランター&鉢栽培で最大の長所は簡単に移動が出来ること。近年続々と発表されている新しい草花の原種は、ヨーロッパやオーストラリア、南アフリカ産が多い。「これまでなかった鮮明な花色」、「花付きの良さ」など、従来の品種に較べてより優れた面が多いけど、前回にも触れたハーブと同様、日本では梅雨時の「長雨」と「過湿」、真夏の高温による「蒸れ」と直射日光の「日焼け」に弱い。その時期を乗り切るには雨があたらず、風通しの良い涼しい場所に置けば成功率は高いので、適宜生育をチェックしながら軒先に鉢を入れ替える。

 

もう一つ、移動が出来るメリットは、背の高さや花の色に合わせて、自由にコーディネートできることだ。開花迄は庭の奥で育て、花が咲き始めたら既に開花中の花と合わせてアレンジを行う。それにより花色の統一や、同系色の「グラデーション」を楽しむことができる。ハンギングバスケットを使えば庭を立体的に飾ることができ、バラやクレマチスの開花時には庭全体を「劇場」のように演出するのも可能である。

 

 

【写真上】「つるバラ」と同時期に咲くクレマチスの中でも一際豪華な『パテンス八重系』。数年前「母の日」に、娘から母(カミさん)にプレゼントされた物を横取りして育てた。品種のタグが付いていなかったので正確な名前は分からないが、多分『新紫玉(しんしぎょく)』だと思われる。一重に較べて花もちが良いけれど見ての通り、雨に弱そう(実際そうだ)のが難。

 

このような、庭全体をキャンバスと見做し、花の色を絵の具代わりにして絵画的に仕上げる園芸の楽しみ方は、随分と前からプロの園芸家の方々から提唱されてきたのだが、今もって普及には程遠い(感じがする)。理由は庭のスペースやノウハウ、ガーデニングに費やす労力とコストが思うように割けないこともあるだろうが、個人的には日本人の「花の観賞法」に原因があるのではないかと思っている。

 

近年に限って見ても、世界の歴史で極めて特異な江戸の園芸文化は『鉢物』が中心だった。大名、豪商が愛でる「盆栽」は言うに及ばず、「菊」や「花菖蒲(はなしょうぶ」、「撫子(なでしこ」、「朝顔」、「万年青(おもと」等、高級(或いは珍奇な)植物の品評会は全て鉢植えで、草花の引き立て役も兼ねてデザインされた専用の(高価な)鉢が用意された。長屋住まいの一般庶民にとっては勿論「庭」などあろう筈がなく、素焼や普通の瀬戸物鉢に植えるのが当たり前であった。そんな流れからか、草花は一品一品を鑑賞する風潮が定着し、今に至っても草花を植えて庭を飾るのは、「庭全体よりは個々の花が中心」というメソッドが抜けきらないのではないだろうか。園芸センターへ行って、買い物客がどんな花を選ぶのか観察してみると、やはり「明るく、ぱっちりした目立つ花」が圧倒的に人気があるのが何よりの証左だ。

 

ただ最近ではヤングミセスを中心に、おしゃれな『寄せ植え』が流行しているし、それ向きの「シック」な花色の品種も登場している。それにHPで個人のブログを見ても『ナチュラルガーデン』、『イングリッシュガーデン』にチャレンジしている方が年々増えているから、ガーデニングの一般市民権を得るのはそう遠くないと思う。

 

ここでは古雅楽館の庭やベランダにある、これから普及しそうな「新しい花」を幾つか、栽培してみた感想を含めて紹介したい。

 

 

シレネ ‘スワンレイク’ Silene uniflora ‘Swan Lake’

 

 

 

『シレネ・ユニフロラ』の八重咲種。『シレネ』とは、日本でも半野生化している「ムシトリナデシコ」の総称で、北半球を中心に300種類ほどが分布する。形態は様々だが、園芸品種の『ユニフロラ』は丸い蕾を一輪ずつ枝に付ける。『スワンレイク』は繊細で清楚な、濁りのない白色花弁が幾重にも重なり、バレエの「チュチュ」を思い浮かべるため『白鳥の湖』の名が付いたのだろう。

花期 : 春~夏 (古雅楽館では4月末から6月末まで咲いている)

耐寒性 : 強 (仙台では戸外で越冬する)

耐暑性 : 中~やや弱 (仙台では問題ないが、暖地は厳しいとのこと)

耐湿性 : 乾き気味を好む (水のやりすぎに注意)

育てた感想 : 花付きは控えめながら大輪で見ごたえのある花が咲く。ただ花がうつむき加減なので、花壇には不向き。ロックガーデンや石垣なら何とかなりそうだが、水はけの良い用土で釣り鉢に植えるのがベター。蕾に「アブラムシ」が付く程度で病害虫にも強い。

 

 

ヘリアンセマム ‘ベン レディ’ Helianthemum ‘Ben Ledi’

 

 

「ハンニチバナ科」の仲間で文字通り短命な『一日花』だが、毎日次々と花が咲く。英国では「ロックローズ」と呼ばれ、ロックガーデンの定番として沢山の園芸品種が作出されているが、冷涼で乾燥した気候を好むため日本では余り普及していない。31℃以上の「真夏日」が何日か続くと持ちこたえられないので、関東(の平野)以南は不向き。逆に東北北部や北海道では元気に育つ。品種名はスコットランドの名山に因むが、本来の名称は『ゲール語』で『Beinn Leitir(=長い尾根を持つ丘)』に由来する。19世紀英国の詩人、ウオルター・スコット『湖上の美人』に謳(うたわ)われ、一躍有名になった。標高は879mと青森県「恐山」の最高峰「釜臥山」にほぼ同じ(878m)。

花期 : 春~夏 (古雅楽館ではGW頃開花)

耐寒性 : 強 

耐暑性 : 弱 (仙台でも夏越しには注意と工夫が必要)

耐湿性 : 乾き気味を好む (水のやりすぎに注意)

育てた感想 : 常緑で照りのある葉は「グランドカバー」にも向くが、湿気に弱いので一般には鉢植え向き。仙台の夏越しは年により難易度が異なるものの、朝日に当てた後は北東の日陰に避難。去年の夏は猛暑にも耐えて何とか乗り越えたが、今年は・・・?

 

 

コンボルブルス ‘サバティウス’ Convolvulus ‘Sabatius

 

 

 

地中海沿岸を中心に250種余りが知られており、形態は一年草や宿根草、低木など様々。日本では一年草の『サンシキアサガオ(コンボルブルス・トリカラー(=Convolvulus tricolor)』が趣味の園芸として栽培されてきた。最近になって宿根草の銀葉・白色花『コンボルブルス・クネオラム』と本品種が普及し始め、ホームセンターにも並ぶようになった。這性の常緑宿根草でアメリカ西海岸等では、「グランドカバー」に多用されている。寒さにやや弱く、古雅楽館では一年前に『クネオラム』を冬の間ベランダに出しっぱなしにして、枯らしてしまった。

花期 : 春~夏 

耐寒性 : やや弱 

耐暑性 : 普通

耐湿性 : 乾き気味を好む (水のやりすぎに注意)

育てた感想 : 直根性なので苗の植付時や移植に注意。また酸性土壌を嫌うのでpHを調節する必要がある(【古雅楽館】《ミントジュレップ》参照)。『クネオラム』は「葉っぱ」も含めて見た目が良いものの、開花期間はこちらの方がはるかに長い。今年の冬は室内に取り込むつもり。

 

 

カリロエ・インボルクラタ ‘ポピーマロウ ワインカップ’ Callirhoe Involucrata ‘Poppy Mallow Winecup

 

 

 

北アメリカのワイルドフラワーとして、米国では古くから親しまれてきたが、日本で園芸用として販売されるようになったのはつい最近である。(多分)原種そのままと言っていい程なので、条件さえ合えば極めて強健。ハーブティーとしても利用される「ゼニアオイ」の近縁種ながら、見た目は全く異なる。大きく透明感のある赤紫色の花は良く目立つ。

花期 : 春~夏 

耐寒性 : 強 

耐暑性 : 普通

耐湿性 : 乾き気味を好む (水のやりすぎに注意)

育てた感想 : 「グランドカバー」に向くとは言え、半日陰の古雅楽館には不向きなのでベランダで鉢栽培している。密集して花が咲く訳でもないし、花梗を長く伸ばすので地植えには広い面積とアレンジのスキルが必要。「花がら」摘みは必須、元々山草なので多肥は厳禁。

 

 

《この項「不定期に」続く》

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1.当初プランターに植えた、小輪・多花性の『モンタナ・スプネリー』の枝が伸びすぎたため、『姫リンゴ』の側に地植えした。クレマチスは移植を嫌うので「ダメもと」だったが何とか根付き、今では勝手に伸びて『姫リンゴ』や『マグノリア』に絡みついて、それらの花が終わった頃を見計らうかのように開花して楽しさ倍増である。

 

2.「方法」・「方式」・「やりかた」。他に(一定の方式として完成された)「楽器の奏法」や「指導方法」を言う。

 

3.直訳すれば自然風の庭」だが、ちゃんとした規定がある訳ではない。上級者に言わせると「自然にあるがまま」ではなく、人工的に手を加えながらも作為的に見えない庭。これが意外と難しい。植栽する樹木や草花の生態や特徴を把握し、無理な(自然ではあり得ない)デザインや植え方はしない。という事は派手な色のバラやチューリップなど植えるのは厳禁で、「本格」を目指すならかなりストイックな庭造りが求められる。

 

4.今や「一戸建の家を建てたら(買ったら)庭は『イングリッシュガーデン』に」、と言うほど憧れと人気のある庭のスタイル。『ナチュラルガーデン』程の「シバリ」がなく、適度に好みの草花を取り入れながら、自然に見せるデザインがキモ。デザインの教科書はネット含めて有り余るほどあるが、大抵はプロの手によるもので、植える植物の生態を把握することは『ナチュラルガーデン』に同じ。大体にして、気候の異なる英国やヨーロッパの草花をただ植えただけでは上手く行く筈がない。一年を通して本人の情熱と勉強、継続力が絶対に必要であることを覚悟すべし。それでも成功した時の喜びはひとしおで、チャレンジのし甲斐があるというもの。

 

5.岩石を配置し岩の間に植物を植えて、恰も高山の一部を切り取ったかのように見せる作庭のひとつ。半畳ほどの個人の庭から大規模な商業ベースの庭園まで幅が広い。広義では日本の『枯山水庭園』も『ロックガーデン』のカテゴリーに入る。実際に高山植物は背の低い種類が大部分なので、自宅に作る際は場所と植物の選択に注意が必要。また岩の隙間(すきま)は不快害虫にとって格好の棲家(すみか)となるため、駆除が厄介である。

 

6.The Lady of the Lake 初版は1810年。歴史上の事実とフィクションを組み合わせた「大河ドラマ」的内容の『叙事詩』で、当時としては異例の「大ベストセラー」になった。本作品にまつわるエピソードは多く、この機会にいずれ取り上げる予定。

 

7.かまふせやま 【古雅楽館】《恐山》参照。

 

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【トップ写真】古雅楽館では、前回載せた「藤」の花が終わってから約一か月後に「つるバラ」が満開になる。門柱の間に懸(かか)る格子には、3種類の「つるバラ」と「ハニーサックル」が咲き乱れる。      

 

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