【古雅楽館】 高音質ソフト 試聴会

 

 

スタッフ紹介コーナーの「趣味」では意気込んで、「オーディオ」と冒頭に持ってきたものの、これまで古雅楽館は一度も「オーディオ」について書いていない。これには色々と言い訳があって、「オーディオとは何ぞや」から始めると、観念的な「青臭い」理論を振り回すだけの文章が延々と続き、ただでさえ読まれないこのブログが、更に評判を落として「ページのムダ」と呼ばれかねない。然も「音(or音楽)」は料理と同じで、個人による感覚や好みの差が歴然とある訳だから、様々なオーディオ機器を通して聴いた音楽を文章として表現するとなると、ボキャブラリーの貧困さにためらいを感じてしまう。

 

もっと下世話な理由は所有するオーディオ機器の紹介。下手すれば「モノ自慢」に成りかねず、ごくノーマルな人から見れば「こんな訳の分からない装置に、ン万円もかけて成金趣味もいいところ」と軽蔑されるのがオチ。もし「マニア」と称する人種が読んだとしたら「たかだかこんな機械で、オーディオが趣味ですなんてよく言うよ」と悪口をたたかれる。どっちに転んでもイイことない。

 

そんな理由もあって現状は、(オーディオの)サークルに入らず、「聴き仲間」もつくらないで、一人気ままに音楽を楽しんでいる。半世紀にわたり「オーディオ」をやっているので、そこそこの『音』は出ている(と思う)のだが、目に見える『尺度』というモノサシがないので、ともすれば『唯我独尊(ゆいがどくそん)』になってしまう怖さもある。或いは「これがイイ音なのか」自問自答する迷いも・・・。まあ後者の方はこの歳なので『諦観(ていかん) の域に達したのか、余り考えたことは無いが、前者についてはやはり「自分の立ち位置」を確認するためにも、たまには客観的に自分のオーディオを眺めてみたいと気持ちは少なからずある。

 

「音」なのに「眺める」とは変な表現だが、オーディオの場合、機器のセッテイングを詰めて行くと出てくる音楽は確かにそこにあるかのように存在する。コトバを変えれば「手に取るように分かる(見える)」。そして組み合わせる機器を代えればその都度、音が変わる。オーディオの醍醐味ではあるのだが、これにハマるともういけません。所謂(いわゆる)「オーディオの泥沼」というヤツだが、これも書くとキリがないので省略。

 

世の中にオーディオの基準という物はあるのだろうか?私見では「ある」と断言できる。自分のキカイではない。マニアなら誰もが納得するあらゆる面で水準を超えたバランスのとれた音は確かに存在する。巡りあう機会はなかなかないが、此度オーディオの標準原器と言うのにふさわしいコンポーネントで、最新の高音質ソフトを試聴するイベントに運よく参加できた。

 

仙台市宮町にある『AUDIOSHOP KEIKI』で、オーディオ専門誌「Stereo Sound(以下SS)」からリリースしているCD(&SACD)とレコードをじっくり聴くという趣向である。毎年これからのシーズンであるオーディオフェアはメインがスピーカーなどハードの聴き比べで、会場も立錐(りっすい)の余地が無い程聴衆で埋め尽くされ、曲も数分のダイジェストなので、人数限定、ソフト中心の時間をかけた試聴会は滅多にない。

 

 

【写真上】試聴会のレファレンス機器。傍目には変わったカタチのスピーカーだが、全てが音響理論に裏付けされたデザインのB&W 803D3、アンプはアキュフェーズでプリがC-2450、パワーはA-70、デジタルプレーヤーも同社のDP-720、アナログプレーヤーはMICRO SE1。

 

レファレンスはスピーカーがB&W、アンプとデジタルデスクプレーヤーはアキュフェーズという、当代きっての一流機器。アナログプレーヤーは曾てマニア垂涎の的だったマイクロ精機という豪華版である。 

 

講師を務めたSS木村さん(古雅楽館ではありませぬ)の話では、歴史的名演奏・名録音のアナログ・マスターテープは世界各国のレコード会社に保管されているが、現今のデジタル時代にアナログテープを使いこなせるプロのエンジニアは数えるほどになり、加えてマスターテープの経年による劣化という問題もあって、復刻には最新技術を駆使してさえ、並々ならぬ努力と苦労が伴ったという事だ。

 

本番は二回に分けて行われ、演奏時間は各90分。古雅楽館は二回目の試聴に臨んだが、定員一杯でも20人程なので極めて良好な環境。先ずはSACD(CD)でクラシックとジャズを聴く。最初の曲が鳴り始めた途端、尋常ならざる音に身がすくむ。何と形容したらいいだろう、高さや奥行までも立体的に構築する音の広がり、微動だにしない定位。爽快なスピード感。大音量でも決して埋もれることのない個々の楽器の位置がはっきりわかる。

 

 

 

ホルスト組曲「惑星」の『木星』全曲に漲(みなぎ)る荘厳さ、特に有名な第四主題「アンダンテ・マエストーソ」の気高さは何物にも替えがたい。ドヴォルザーク『新世界』第一楽章冒頭のティンパニの響きは「なまじの装置ではボール紙を叩いているような音がする」と木村さんが仰っていたが、こちらは紛うことなき本物。体全体を揺るがすかの様な強打に平伏。

 

一時間近くクラシックとジャズが続いた後、ガラリと変わってSSが力を入れている80年代のニューミュージックや歌謡曲が次々に登場。

 

当時のレコーディングはスタッフも優秀で録音技術も極めて水準の高い曲が多かったものの、新曲の販促メディアはラジオ中心であったため、聴きやすいように加工を施して発売したレコード(CD)が殆どだったと言う。要はAMラジオ、カーラジオでも明瞭に聞こえるよう高低音域を圧縮し、中音域を持ち上げた「音造り」であった。従って古雅楽館の経験でもそうだったが、一定水準以上の(オーディオ)装置で再生すると、録音の「あざとさ・わざとらしさ」が耳につき、とても聴いていられるモノではなかった。そんなこともあって、80~90年代のオーディオ・レファレンスレコードで(国産の)ニューミュージック、歌謡曲は絶無であったように記憶する。

 

考えてみれば、(ジャンルの)好き嫌いは別として、「ニッポンのウタ」が今では貴重な無形文化遺産とさえ言える高水準の録音に裏付けされていながら、誤解と偏見のまま忘れ去られてしまうのは余りにもモッタイナイ。そんな理由もあり、埋もれていた優秀録音を探しては一切の妥協なしに復刻、現代の再生装置で改めて名盤を堪能して欲しいとのことであった。

 

 

 

最初に聴いた、太田裕美の『木綿のハンカチーフ』ではコケティッシュな声の質に感動、『ダブルトラック録音』の仕掛けが聞き取れて興味深い。松田聖子の『SWEET MEMORIES10』は一気に35年前にトリップ、この時期トップアイドルだった「聖子ちゃん」、流石に人気(容姿)ばかりでなく実力の方も相当なもの、滅茶苦茶に上手い!ペンギンのラブストーリーとオーバーラップして感涙に咽(むせ)びそう。

 

石川さゆりの45回転LPでは偶然サントリー繋がりで、『ウィスキーが、お好きでしょ』。91年ファーストリリースの8cmCDは今でも手に入るし、カバーバージョンは十指に余るが、このレコードはオリジナル・アナログ・マスターテープからプレスまでの工程を極限まで減らし、一切の調整を排したとびっきり鮮度の高い音。恰も自分だけに唱ってくれている、降参であります。

 

気が付けばあっという間の中身の濃い90分でありました。聴いた曲は全て会場で販売されていたが、どれもこれも欲しいものばかり。然し予算が追いつかない。結局、以前から気になっていたが既に売り切れの『テレサ・テン<ベスト2>』、SS木村さんがかき集めてきた、それこそ残り数枚からゲット。演奏会終了直前に流れたアン・ルイスのカバー『再見、我的愛人(=グッド・マイ・ラブ)』を聴いて躊躇(ちゅうちょ)なく決めたというのが本音である。

 

 

中国語で唄う情感、音の彩(いろど)り、消えゆく子音の余韻。何という美しさ、自分にとっては今回聴いた曲の白眉(はくび)である。会場のモニター的美音に及ぶべくもないが、自宅のささやかな機器でどのように再現するか。 ハードルは高いが、これも今後の楽しみの一つである。

 

行ってよかった!久し振りにオーディオの刺激と充実感を味わった半日でありました。

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1.仙台市青葉区宮町1丁目1-55 コーポタイワⅢ 1F 仙台のピュアオーディオ専門店として貴重な存在。今回のみならず、定期的に試聴会を実施しているので、オーディオファンにはありがたい。

 

「ステレオ・サウンド」 1966年に創刊され半世紀の歴史を誇る、日本のみならず世界的にも有名なオーディオ専門誌。本誌によって紹介された海外ブランド製品は数知れない。「真空管」、「AV」その他オーディオに関する姉妹誌や別冊も多数出版されている。

 

3. 『Bowers & Wilkins(=バウワース・アンド・ウイルキンス)』 英国を代表する高級スピーカーブランド。英国には今でも世界に名だたる高級スピーカーメーカーが多いが、B&Wは「音の色付けがなく、歪みが少なく、レンジが広い」スピーカー造りが会社の理念。ルーカス・フィルムをはじめとする世界中の(録音)スタジオやオーディオメーカーのモニタースピーカーとして抜群の信頼性を誇る。

 

4.1972年創業の日本を代表するオーディオメーカー。スピーカーは造らず、アンプやイコラーザー等の高級エレクトロニクス製品に特化している。アフターサービスも万全で、海外では特にドイツで信仰者が多い。B&Wと共にSS視聴室のレファレンス機器でもある。

 

5.1970年代、オーディオシーンで一世を風靡したレコードプレーヤーメーカー。当時、ターンテーブルをモーターで直接駆動する『ダイレクトドライブ』が主流の日本で伝統的なベルトドライブを一貫して採用。特にターンテーブル、本体、モーターを別パーツとして組み合わせたシステムは、ポンプによる「レコード吸着」、「ターンテーブルフローティング」を採用し、究極のアナログプレーヤーとして絶賛された。

 

6.ズービン・メータ指揮、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団、1971年UCLA『ロイス・ホール』で録音された。『惑星』の演奏は特殊(古代)楽器による編成を厳格に求めており、『ロイス・ホール』での演奏もパイプオルガンがあってこそだった。此処にあるオルガンは6,000ものパイプの中、最高音域は僅か1インチ。最低音域は32フィートもあり、あらゆる楽器の中で最も低い音を出せるが最早風圧に近い。実際にこの重低音を再生するのは至難のワザだが(部屋が壊れる)、演奏会場では確かに出ていたように思う。

 

7.andante maestoso 「歩くような速さで荘重に」。この部分は英国で愛国歌『サクステッド(=Thaxted)』として広く歌われている。歌詞は外交官セシル・スプリング・ライスによるもの。ダイアナ妃はこの曲を大変好まれ、1981年の結婚式と1997年の葬儀の際も演奏された。日本では平原綾香2003年のデビュー曲としてポピュラー。

 

8.収録されたSACD・CD盤『心が風邪を引いた日』にはアルバム用のオリジナル版とボーナストラックとしてシングルカットされたバージョンも収められている。シングルバージョンはアルバムからカットされたものではなく、新たに録音し直されたが歌詞が一部変更されている。3コーラス目、アルバム:「恋人よ 君は素顔で」 ➔ シングル:「恋人よ 今も素顔で」。 

 

9.同一歌手によるボーカルラインを二度以上オーバーダビング(重ね録り)する録音テクニック。聴き方により一人による斉唱のような印象を与える。歌唱力を補うというより、エフェクターなどと違った効果を得るために今でも広く使われている。有名どころではビートルズのリードボーカルが殆どこの手法。

 

10.本来は松田聖子14枚目のシングル『ガラスの林檎』 B面の曲。リリースされた当初はA面ばかりが注目され、半ば忘れられた存在だったが、サントリーCANビールのCMソングとして俄然注目され大ヒット、「両A面シングル」として再発されミリオンセラーを記録した。CM放映時は敢えて松田聖子のクレジットを表示しなかったことから、当初歌手が誰なのか分からず、これも大きな話題になった。松本隆が作詞した『木綿のハンカチーフ』といい、この曲といい時代に先んじた歌詞の斬新さも注目に値する。松本隆は作曲の大村雅朗と共に「松田聖子が唄いこなせるか危惧(きぐ)していたが、見事に歌い上げた」と称賛している。CMに使われたのは2コーラス目の英語の部分で、松田聖子にとって英語の歌詞を歌うのは初めてだったという。

 

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トップ写真】今年も金木犀の季節がやって来た。このブログ掲載時には既に散ってしまったが、朝リビングの窓を開けると甘い香りにむせ返るよう。出窓に飾ったイッタラのキャンドルホルダーもそこそこに増えた(【古雅楽館】キャンドルⅠ参照)。

 

 

 

 

 

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