【スタッフブログ】旅は水道水になるべきか

春爛漫と言いたいけれども、肌寒い日の続く今日この頃。

 

それでも昼休みに散歩するのが楽しい季節になってきました。

散歩道

 

散歩はツーリズムの一番根本的なものであると同時に、

基本的には無料です。

 

これが冬場だとついつい缶コーヒーとか買ってしまうし、

夏なら水分補給はなおさらですが、

 

この季節は本当にタダで旅ができます。

だけどその可動力というのはとても限られており、

 

昼休みのような限られた時間では自分の行動範囲

(犯罪心理学では1マイル=1.6km四方とされています)

を逸脱するのは難しいでしょう。

 

そういう意味では散歩が旅なのかどうかは意見が分かれると思います。

 

さて、交通機関が徒歩しかなかった頃の都市というのは

古今東西を問わず直径4kmとされています。

現在では都心と呼ばれているエリアで、

その範囲の根拠は歩行者の行動範囲がそうだからです。

gediminas' tower からのビリニュス旧市街。街歩きはまだまだ続く。

 

現在、東京という都市が半径50km程度に拡大しているのは、

もちろん鉄道と自動車のおかげです。

Train

 

どちらも決してタダではないけれども、

比較的安価に乗ることができるから人の交流が活発になり、

それによって市街地が広がっていきます。

Highway 407

 

これが例えば新幹線だとそうはいきません。

人の交流は活発になるけれども、

でも市街地同士が繋がるほどは密接にはならない。

なぜなら高いから。

TGV

 

某通信企業さんが新幹線通勤を奨励し始めたことが

話題になりましたが、これに他が追随して

世の中的にそれが当たり前になってくると

もしかしたら小田原や高崎が東京の一部になるかもしれません。

 

 

しかし今はまだ新幹線に乗ることは、

誰しもにとっての日常ではありません。

 

そこで思い出されるのは、

故松下幸之助氏が説いた「水道哲学」です。

水道

 

1932年の社主訓示をそのまま引用しますと、

 

産業人の使命は貧乏の克服である。

その為には、物資の生産に次ぐ生産を以って、

富を増大しなければならない。

水道の水は価有る物であるが、

乞食が公園の水道水を飲んでも誰にも咎められない。

それは量が多く、価格が余りにも安いからである。

産業人の使命も、水道の水の如く、

物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する事にある。

それによって、人生に幸福を齎し、

この世に極楽楽土を建設する事が出来るのである。

松下電器の真使命も亦その点に在る。

 

今日のコモンセンスでは差別的な表現も含まれているのと、

大量消費社会的な価値観は必ずしも同意できるものではないですが、

 

産業人の指針としては決して今も色あせないのではないでしょうか。

 

実際にこのようにして様々な産業が革新を繰り返して、

ひと昔前なら技術としては実現していても

庶民には手に入らなかったものが手に入るようになりました。

 

その代表例として真っ先に浮かぶのは

携帯電話ではないかと思います。

Phones

 

そして人が移動する、ということにおいても、

はじめてイングランドで汽車が走った時からは考えられないほど

鉄道も自動車も、格安航空券やLCCの登場で

空の移動すらも水道になっています。

plane

 

移動の水道化にあたって旅行業が果たしてきた

役割も小さくはありません。

 

ひとつ覚えのように書きますが、

近代旅行業の始祖であるトーマス・クックが最初にやったことは、

団体仕入による鉄道の価格破壊でした。

70038

 

現在の航空機においても、旅行会社と航空会社の間で

日々このような折衝が行われ続けているからこそ、

安く旅行に行ける世の中になっています。

 

 

ここで考えなくてはいけないのは、

移動が低廉化して、旅行に行くのには簡単になりました。

 

今や一生に一度の海外旅行、

行くと決まれば親戚やご近所から餞別をもらう、

 

なんてことはありえません。

 

ただ、旅行そのものが水道化することに対して

無自覚無批判でいていいのか、

というもやもやがどうしてもあります。

 

旅の目的は人それぞれであって、

むしろこれまで旅行会社がそこに介在し過ぎていた。

 

旅行会社はあくまでスムーズに旅ができるよう、

エスコートだけすればいい。

 

そういう考え方は確かにあるでしょう。

 

だけれども、それを突き詰めていくと、

結局は規模の経済、

つまり大手の旅行会社しか生き残れないのではないでしょうか。

Skyscraper

 

水道水の比喩でいえば蛇口を押さえている人たち、

ということになります。

可愛い蛇口

 

今や水道水を直接飲む人もだいぶいなくなりましたが、

でもペットボトルに入っている安価な水やお茶のみならず、

 

随分と値段の高いグリーンスムージーのようなものが

好まれて売れています。

Vitamixでの初グリーンスムージー。すごい、ジュースみたい! #breakfast

 

合理的に考えれば、安いジュースを飲み、

栄養はサプリで補給すればいい、

 

と思うんですが、不合理を求める、

不合理に価値を感じる消費者が

たくさんいるということになります。

 

 

 

遠回りに見えても旅行業は

合理性とともに不合理性を追及していかないと、

生き残っていけないのではないかという気がしています。

 

旅行業は移動の水道化を推進していくと共に、

代替できない旅の価値を伝えていくということもしていかないと

travel

 

掘り当てた湧水を蛇口より安く売っていたら、

ある日湧水が涸れてしまう。

砂漠が侵食してきて木がうもれつつある

 

ということになりかねません。

 

以上、東京支店の岡でした。

 

OKA★Kyoske

 

 

トラックバック・ピンバックはありません

トラックバック / ピンバックは現在受け付けていません。

コメントをどうぞ